アレハンドロ・アラヴェナの建築哲学とは?
デザインの持つ力
過去3回にわたって、チリの建築家、アレハンドロ・アラヴェナ氏のTED Talkを解説してきました。
アレハンドロ・アラヴェナ: 私の建築哲学―コミュニティが参加するプロセスを | Talk Video | TED.com
最後にササッと統括したかったのですが、なかなかまとまらず、、、、結局1週間が経過してしまってました。
「そもそもアラヴェナさんが言いたかったことって何やったんやっけ?」っていう問いを自分に投げかけることで、ようやく整理立てて理解することができました。
アラヴェナ氏の伝えたかったことは、プレゼンの一番始めに言っていました。
If there's any power in design, that's the power of synthesis.
デザインには統合する力がある
統合=二つ以上のものを合わせて一つにすること by デジタル大辞泉
つまり、ここでアラヴェナ氏が述べていることは、
「デザインには二つ以上の問題をいっぺんに解決できる力を持つ」
ということなんです。
彼はその根拠を、3つのプロジェクトの紹介で証明していきます。
1つ目は”ハーフ・ホーム”プロジェクト。
このプロジェクトで彼は、都市化の増大にともなう3つの問題(Scale, Speed, Scarcity)を”半分の家だけを作る”デザインで3つ同時に解決することに成功しました。
2つ目は”知的創造が生み出せるオフィスの建設”プロジェクト。
従来のオフィスでは設計上の問題で欠落してしまいがちな、”適度な環境(温度と新鮮な空気)”と”人同士のコミュニケーション”。そこで彼は、”中心部を空洞にする”オフィスデザインを採用することで、それらを同時に獲得することを実現しました。
最後に、”都市の復興”プロジェクト。
コンスティトゥシオンという都市は、洪水問題、劣悪な公共スペースの問題、住民が川を使いない問題をそれぞれ抱えていた。それらの問題をアラヴェナ氏は、”森を作る”という都市デザインで一挙に解決しました。
全てのプロジェクトで、彼は2つ以上の問題に対して1つのデザインを提供することで問題解決に取り組みました。これらの事実が、「デザインには統合する力がある」ということの裏付けとなっているのです。
プレゼンの最後では、彼の建築哲学について少しだけ触れています。
アレハンドロ・アラヴェナの建築哲学とは?
彼の活動で特徴的な部分は以下の2つです。
1. コミュニティを解決するプロセスに参加させて、本質的な問題を発見するところ
「ハーフ・ホーム」プロジェクトでも、「街の復興」プロジェクトでも本質的な問題の発見をするために、コミュニティの声を親身になって拾っています。特に「街の復興」プロジェクトではそのことが顕著に現れていました。住民が抱えている問題の本質は、Tsunamiではなく別のファクターがだったのです。
2. デザイン(プラン)を実現する過程で既存のリソースを活用するところ
住民の"住居を建築する力"を利用すること、"昔から存在するアイデア"を採用すること、"自然"を有効活用すること、"都市公共投資資金"も有効に活用していました。
デザインを生み出す過程で、
問題を発見するために、コミュニティを参加させること。
解決策を実現する過程で、既存のリソースを活用すること。
この手法が彼の特徴的な部分であり、この手法こそが彼の建築哲学を現しているのではないのでしょうか。
あるもの使ってみんなで解決しよう。的なね。
アラヴェナ氏は今後も多くの問題に真摯に向き合っていくのでしょう。
彼がますます活躍することを心より期待しております。
あとがき
建築関係の仕事をしている知人からアラヴェナ氏の話を聞いたとき、心が躍ったことを今でも覚えています。なぜそんな感情になったかは当時分からなかったのですが、こうして彼の哲学を自分なりに解釈することで、ようやく分かった気がする。
泥臭くみんなを巻き込んで、リソースを最大限有効活用しながら問題を解決する姿勢に惹かれたのだと思います。
ではまた。