シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

デジタル医療についてThe Economistが語ること

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これからは頻繁に、The Economistで面白い記事を取り上げて簡単な解説をしようと考えている。解説と言っても記事の詳細を翻訳するのでなく、記事の書かれている単語の意味や、話されている文章自体の背景の説明に重きを置いていくつもりである。この記事を読んで頂いてから、実際の記事を読むと理解がしやすくなるというイメージで書いている。つまり本記事は、国際情勢を知りたいのみの人向けではなく、どちらかと言うと「英語勉強も兼ねて国際情勢を知るためにThe Economistを読みたい、でもいまいち理解できなくて困っている」という日本人のために書かれている。すごくニッチなところを攻めているのだ。

www.economist.com

記念すべき第一回目に取り上げるのはテック業界でも話題になっているデジタル医療の話。2月3日号のThe EconomistではLeaderのトップ記事に、テクノロジーの発達で急激に実用化が進むデジタル医療について取り上げている。Leader以外にもBusiness欄で軽く特集されていたので、今回はそちらの記事を簡単に解説する。

冒頭でも伝えている通り、トピックはDigital Health。”Tech Giant”と言われる超巨大IT企業がヘルスケア事業に進出して来たって話を詳しく解説してくれている。その結果、一般消費者に質の高い診断の提供や低コストの提供が実現できるようになるとのこと。
本誌の流れは、Apple, Amazon, Google, Facebook, Microsoftなどの錚々たる企業がプレーヤーとしてヘルスケア市場に乗り出してくるが、その中ではAppleが最終的に勝つのではと推察している。鍵を握るのは、セキュリティとiPhoneだとか。
実は10年ほど前にもヘルスケア事業の進出を試みたことはあったが、その当時は普及せずに終わる。しかし、あれから10年経った今、爆発的にスマートフォンが普及したこともあり、今回は普及する可能性が高くなる見込み。普及しすぎると”独占”という目で見られるので、それはそれで苦労する部分も出てくることも予想される。今回の特集では、各社のサービスや特徴を順に説明してくれているので、将来の医療のカタチが想像しやすくなる。iPhoneがメディカル媒体になる話とか。最近のテクノロジーの話は夢がある。夢があるから資金が流入するんだろうな。

さて本記事のタイトルは「Surgical intervention」であった。これを直訳すると外科の介入となるが、おそらく意味合いとしては外科 = 外部であり、もともと畑の違う(外部)のテック企業がヘルスケア事業に進出してきたという意味なのだろう。こんな感じでちょっとひねりのあるタイトルがThe Economistの特徴でもある。


各社のサービスについて
Apple: 1/24、次回のソフトウェアアップデートでHealth appを標準アプリにすると発表。 ただAppleのアプローチ方法はよりハードウェアのサプライに強化している。医療系ハードウェアのプラットフォームデバイスを提供してソフトは第三者に提供してもらう戦略を取る。そんなわけでiPhoneはかなりの強みとなる。
Amazon: 1/30、Berkshire HathawayとJP Morgan Chaseとともに非営利ヘルスケア企業を設立。3社の従業員向けのサービスからスタート。対象者は100万人に及ぶ。医者のアポイントを取るのがものすごく簡単になるようなアプリを作成するとの噂も。まずは自社従業員に試してそこからスケールする見立て。
・Alphabet (Google): 3つ目となるCityblock Healthというヘルスケア企業を設立。同じくAlphabet傘下のVerilyとDeepMinde Healthと連携して展開していく。ヘルスケアのプロをサービス対象者の自宅に派遣するサービス。低所得者層に向けて行われる。NHSと提携してStreamsというサービスを提供。

語彙
・Surgical = 外科の、外科手術用の
・be poised to = ~する構えができて to do
・sphere = 範囲、領域分野
・foray into = [敵地を]急襲すること
・incumbent = having an official position
・undeterred by = くじけない、懲りない、阻止されない
・indispensable = 欠くことのできない、不可欠な
・prolong = to make something last longer
・disrupt = to make it difficult for something to continue in the normal way
・diabetes = 糖尿病 EX)Diabetes is common in Japan among people over 50 - about one in every four people.
・straightforward = 簡単な
・immensely = 非常に
・accelerometer = 加速度計
・arrhythmia = 不整脈
・envisage = (将来のことを)心に描く、予測する = envision
・electrocardiogram = 心電図
・tinker = to make small changes to something in order to repair or imporve it, especially in a way that may not be helpful.
・blood oxygenation = 血液酸素
・inexorable = 変えられない、防げない
・dog = (of a problem or bad luck) to cause you trouble for a long time

注釈
・tech giant: The Economistで良く使われる表現。AppleAmazonといったIT系巨大企業のことを指す。
Apple: Revenue $215bn (2016)。時価総額は世界1位の$ 859兆ドル。ちなみにトヨタ自動車は$ 205兆ドルで世界第43位。
Amazon: Revenue $ 134bn (2016)。時価総額は世界4位の$ 699兆ドル
・Alphabet: Revenue $ 90bn (2016)。Google及びグループ企業の持ち株会社として2015年に設立。時価総額は世界2位の$ 817兆ドル
・Berkshire Hathaway Inc,:ウォーレンバフェットがオーナー兼CEOの米投資ファンド時価総額は世界で第7位の$ 530兆ドル。長期投資スタイルを基本とする。長者番付では1986年以降毎年ベスト10に入り続けている。
・JP Morgan Chase:米国NYに本社を置く銀行持ち株会社時価総額は世界第10位の$ 401兆ドル。
・Verily: Alphabet傘下の会社。ライフサイエンス事業を担当。2015年に12月にGoogle Life Scienceから改名。
・DeepMind: 正式名はDeepMind Technologies Limited。英国で人工知能を研究する企業として2010年に創立。2014年にGoogleに買収される。当時、売上や利益は出していなかったが、その保有する技術や人財の価値を買われた。2015年にDeepMind社が開発したAlphaGoのプログラムがプロ棋士に勝利したことで一躍注目を浴びることとなった。
・Calico: 2013年9月にバイオテック研究開発企業としてGoogleとArthur D. Levinsonの共同出資によって設立される。"California Life Company"の頭文字をとってCalicoと呼ぶ。
・National Health Service(NHS):イギリスの国営医療サービス事業。イギリス国家の約25%が投入されている。
Facebook: Revenue $ 23bn (2016)。時価総額は世界5位の$ 543兆ドル
Microsoft: Revenue $ 85bn (2016)。時価総額は世界3位の$ 731兆ドル
・Health careの市場はGDPの10分の1と言われている。全世界で$ 7trn (2015)の大きさ。
・UnitedHealth Group: Revenue $ 185bn (2016)
CVS Health: Revenue $ 178bn (2016)
パーキンソン病:手の震え、動作や歩行の困難など、運動障害を示す、進行性の神経変性疾患。特に65歳以上の割合が高い。日本では難病指定。
・Medicaid(メディケイド):アメリカ合衆国連邦政府の公的医療保険制度の一つ。もうひとつの公的医療保険制度であるメディケアと共に、1965年に創設された。
 主に低所得者・身体障碍者に対して用意された公的医療制度。費用負担は州と連邦政府
・glucose:グルコースブドウ糖世界保健機関必須医薬品モデル・リストに入っている。甘いを意味するギリシア語由来のフランス語からきている。 -oseは炭水化物を示す化学分類辞。