シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

日本の住宅価格からみる「失われた30年」

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今日はWebに掲載されていた記事から。2019年5月11日号のThe Economist、Daily Chartにおいて、世界の住宅価格の指数推移を30年スパンで掲載。いつを起点に比較するか、どの都市を比較するかなど、フレキシブルに調査できる上、グラフィックスもすっきりしているのが秀逸。

https://www.economist.com/graphic-detail/2019/03/11/global-cities-house-price-index?date=1990-03&index=real_price&places=TOK&places=LON

今回の記事はここ数十年ほとんど多くの都市で上昇してきた物価がそろそろピークを迎えつつあるという内容。「プライム期間」の終了だそうだ。マリオの「スター状態」が終わってしまった感じ。物価の上昇が叫ばれていたニューヨーク、ロンドンやシドニーといったメガシティも実は物価指数でみると直近の2年ほどは落ち目にあるとか。

昨今の世界の住宅価格は株や債権のように海を越えても関連しているため、一つの都市の価格が下がれば、別の都市もつられて下がるようになってきている。としているのはIMFの見解。とくに注意が必要になるのは、下降傾向にある場合。各国の住宅価格下落がシンクロして、景気後退の引き金になってしまうからだ。

他国がスター状態でコインを稼ぎまくっていた一方で、我らが首都・東京の住宅価格は1990年と2018年とを比較すると56%下落していることが分かる。同期間のロンドンは194%の上昇。失われた「20年」というワードをよく耳にしていたが、あれから10年。今では、失われた「30年」になる。綺麗でシンプルなグラフィックだからこそ、それが直接的に理解できるところが残酷だな。

正直なところ、この「ずっと経済が下火な状態」はこの先の10年後も変わらないと思う。これからも失われた「40年」「50年」「60年」と呼ばれ続ける可能性が高い。呼ばれないとするならば、逆にこの状態が平常という認識になったときだけだろう。

今まであればこの失われた「30年」を生み出した原因はバブル世代のせいだったり、今定年退職逃げ切りモードに入っている人びとのせいにできた。しかしながら、今後10 - 20年間はそうわいかないだろう。むしろもっと若い世代から非難の矢面に立つターンになる。そう、近い未来は自分たちの世代にかかっているといっても過言ではない。のかもしれない。そんなわけで、ひたすら上の世代に対してぐちぐち文句を言うのではなく、まずはできる範囲で最大限自分のリソースを使っていければなと、そういう風に生きて、次の世代が営む社会を少しでもいいものにできればな、なんて思うのです。

さっ、もっともっと勉強しよっと。

 

覚えておきたい事柄
IMF: International Monetary Fund国際通貨基金)1944年7月のブレトン・ウッズ会議で創立が決定、3年後の1947年に業務を開始した国際機関。2019年9月末時点の加盟国は189ヵ国。主な目的は加盟国の為替政策の監視や国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資を実施することなどを通じて、国際貿易の促進、加盟国の高水準の雇用と国民所得の増大、為替の安定、などに寄与することになっている。会合は原則2回。
日本はIMFへの出資が第2位であり、IMFのNo.2である副専務理事ポストを4つの内1つを確保しているとか、そんなこともあり日本政府に逆らえずに、件の「消費税15%まで上げないと」発言が出たなども言われている。

 

覚えておきたい英単語
・a housing bust: 住宅価格の崩壊(ここではサブプライムローン問題のこと)
・exuberance: 活気
・a synchronized downturn poses
・median: 中央値
・outstripe the income: 追い越す
・hostile to overseas investment: 敵意がある
・space-constrained city

 

使っていきたい英語表現
・Interactive guide/graph
・a decade ago
・substantially
・reach new highs
・The rise has been particularly pronounced
・defined as .....
・since their peak in 2014
・increasingly correlated
・risk of causing a recession
・could affect financial stability
・to help determine whether housing is fairly valued or not
・benchmark
・on this basis
・whatever the outcome
・likely to slow down in the coming years
・wealth creation
for the moment
・be drawing to a close