シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

星野リゾートから学ぶ「ミッションの作り方」

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起業に向けてミッションを作りたいけど、どんなものをどういう風に作ればわからない。そんな人のために、今回はある企業のミッションを紐解くことで、具体的にどういう風に作っていけばいいのかを紹介していきたい。

今回参考にさせていただく企業は「星のリゾート」。

星野リゾート

株式会社星野リゾートは、本社を長野県北佐久郡軽井沢町におく総合リゾート運営会社。経営不振に陥ったリゾート施設や旅館の再生で知られる。 by Wikipedia

 星野リゾートは近年、特徴のある運営・経営スタイルで著しい成長を遂げており、
苦境に立たされている観光リゾート業界で成功を収めている数少ない企業である。

一言で言うと、やや斜陽気味の観光業界において、ユニークな取り組を行うことで急成長している企業。今回は彼らが成功している要因を、彼らが掲げるミッションから紐解いてみる。

ミッション:「日本の観光産業をヤバくする」

以下 株式会社星野リゾート代表取締役 星野佳路 インタビュー記事抜粋させて頂く。http://www.business-plus.net/special/1008/158801.shtml?i=re

星野リゾートも、初めは 「日本の観光の競争力を高めて地域経済に貢献しよう云々」 といったコピーを考えていました。しかし、書いていて 「企業のミッションって、誰に説明するものだろう?」 と、ふと思いました。ミッションって、お客様にフロントでご説明するものではありませんし、金融機関にプレゼンするわけでもありませんし、圧倒的にリクルーティングに使う言葉ですよね。学生や、これから星野リゾートに就職してもらえるかもしれない人たちに対して、星野リゾートはどういうミッションを持っている企業なのかを説明するためのものなんです。

そこでリクルーティング担当が言うには、「日本の観光産業に貢献しよう」 なんてのは若い人に受けない、こんなのはジジくさくてダメだ、と(笑)。 では、中身は変えず、彼らにも伝わるようにシンプルに言うとどうなるか? そこで出てきたのが、「日本の観光をヤバくする」 という表現でした。

 要するに、用いるワードをターゲットに伝えやすいようにデザインし直したということ。志の方向性は全然変わってないが、確かに印象が変わっているのが実感できる。
ちなみに”ヤバい”というワードはスキーやスノーボードをしている若者が多用しているのを耳にして、星野さん自身がコレだと思ったのだという。

次にビジョンにも触れておこう。

 ビジョン:「リゾート運営の達人になる」

日本の観光業は海外と比較して競争力がなく、その大きな原因の一つとして、日本の観光業のビジネスモデルに問題がある、と星野さんは指摘する。近年大きな発展を遂げた海外リゾート業は「所有」「運営」を切り分けるビジネスモデルを打ち出すことによって成功を収めるようになった。だから、星野リゾートでは「運営」に特化することを目指した。さらに、自身の競争力を高めるだけでなく、「所有」「運営」を分離させるビジネスモデルを日本にも構築し、最終的に日本の観光産業全体の競争力を高めたいという野望が星野さんにはあるのだ。

 

”ヤバくする”ということ

企業のあるべき論や事業戦略を目を凝らして見ていくと、ミッションに使われている”ヤバくする”という意識が、ひとつのブレない指針となっていることが分かる。

例えば、究極のフラットさを組織のあるべき姿として置いている点。星野リゾートの目指す姿として「言いたいことを言える環境をキープする」といことがある。これは組織として従業員の議論を歓迎してるから。なぜかというと議論の先により良いものが生まれると信じているから。ひとつのモノゴトを決める際に、ある一人が独裁権を持って決めることを良しとしない。コンフリクト=生きた言葉の争いを通して素晴らしいものが生み出せると考えている。”ヤバくする”という言葉は生きた言葉であって、ミッションに通じることがあると実感した。

店舗のコンセプトを決める際にも”ヤバくする”という言葉が生きている。三重県の「タラサ志摩ホテル&リゾート」の例でよく分かる。タラソテラピーというサービスを提供するのが強みであるが、テラピーとなると「癒し」「リラクゼーション」というイメージが先行してしまう。だけど、それだといわゆるありきたりな言葉となってしまって、埋もれてしまう。そこで練り上げたコンセプトが「海エナジーをチャージする」だった。休みのではなく、がっつりエネルギーの補給。生きている言葉を使っているし、新しい感覚ぶっとんだ感じがヤバい。

コンセプトを決める際に徹底していることが2つあり、1つが若者の「エッジ」を大事にするということ。もう1つが、現場レベルの声を吸い上げること。「エッジ」を大事にする理由は、もちろん”ヤバさ”を追求したいから。「現場の声」を大事にしているのは、現場の方が共感力が半端なく強いからである。このぶれない考えがあるから、今のユニークでエッジの効いたリゾートサービスが提供できているのだ。

星野リゾートからの学び

星野さんには「日本の観光産業に貢献する」という使命を持っていた。
その使命を提供したい人、伝えたい人は誰なのか、何のために伝えるのかを深く問いただすことで、「日本の観光産業をヤバくする」というものに変えた。
その変えた表現が、ターゲットにクールに伝わるようになっただけでなく、自分たちの取り組みに対してもユニークさを作り上げる根元となった。
つまり、ミッションを考えるときには伝えたい相手によって、言葉のチョイスを変えようということ。そうすることで、自分たちの強みも鋭利になってくるということ。

株式会社星野リゾート企業HP
http://hoshinoresort.com/#home

株式会社星野リゾート企業採用HP
http://recruit.hoshinoresort.com/