シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

脳とコンピュータが会話する世界を想像した結果

今日もThe Economistの記事。2019年7月18日号のScience and technologyで、イーロン・マスク氏らによって創立されたNeuralinkが明らかにしたBMI(Brain-machine interface: ブレイン・マシン・インターフェース)について伝えている。彼らが開発した新しいデバイスや手法の登場で、BMIの実用化がまた一歩前進したようだ。

 

https://www.economist.com/science-and-technology/2019/07/18/elon-musk-wants-to-link-brains-directly-to-machines


BMIのを簡単に説明する。BMIとは、脳とコンピュータとでダイレクトに交信ができるようにする手法のことを指し、脳から発生する脳波を検出(レシーバー)したり、逆に脳に信号を送る(サーバー)ことができる装置(電極)を脳に埋め込んだり、頭に設置することで実現する。視覚や聴覚といった感覚器を介さず、直に脳とコンピュータがやりとりができるので、パーキンソン病等の運動機能に障害が現れている患者への治療法のひとつとして使われ始めている。

 

このBMI自体は数年前から取り上げられており、タイプとしては侵襲と非侵襲、つまりレシーバーとなる電極を直接脳に接触させるか否かで分かれている。侵襲の方が精度の高い交信が可能あが、感染症や脳の損傷といったリスクがあるので、なかなか人に対しては実用されてこなかった。だがもちろん、世界一リスクをとることで有名なこの起業家は、侵襲式の開発を進めてきた。

 

そうして今回発表されたのが”neural lace”と言われる装置。超薄いメッシュ状(メロンのカバーに使われてる白いやつが分かりやすいイメージ)の電極を脳の中に入れることでBMIを実現させる。言うまでもなくハードルは非常に高い。なぜなら、脳に損傷を与えないくらい柔らかい素材でいて、長期間劣化しない強度・耐久性も必要。加えて数万を超える電気信号(情報)を拾い・受け取れるキャパシティがいるので、数千の電極を埋め込まないといけない。しかも素材や数だけでなく、その電極を埋め込むための手術を痛みを伴わないでいて、かつ寸分の狂いなく正確に、それでいて素早く行わなければならない。

 

ただ、流石といいますかNeuralinkはそのハードルを超えてくる。今回のプレゼンテーションで見せたのは、ロボットが人の髪の毛の1/4まわりの直径しかない”Threads(糸)”を超精密に、高速でインプラントしていくところだ。それぞれのThreadsには32の電極が含まれており、1分間で6つ埋め込むことができる。Neuralinkはすでにラットやマウスを使ったテストは実施済みで、スクリーン上のカーソルを動かすことに成功している。FDAの許可が降りれば今後は人間でのテストに移る予定だそうだ。

 

このBMIの開発は医療分野で大いに貢献するはずであるが、マスク氏の野望はそれだけには留まらない。将来的には脳内に埋め込んだneural laceあるいはそれ同等の働きをするチップと、イヤホン型のレシーバー(AppleAir podsみたいなもの)が反応して交信できるようにすることである。さらには、ゆくゆくは埋め込んだチップがAI systemと統合させること。こうすることにより、ようやく人類はコンピュータが席巻するであろう先の未来でも生き残ることができる、というのが彼の信念である。さもなければ、人類はArtificial Intelligenceに置き去りにされてしまう。

 

 

正直なところかなりSF染みており現実感に欠けてしまうが、おそらく私が思っている以上に実用化は近いのだろう。シンギュラリティやらホモ・デウスの登場などともリンクする話題であり、興味は惹かれる。この話題の中心には常にイーロン・マスク氏がいるので、彼には畏敬の念すら抱く。グーグル創業者のラリー・ペイジ氏が「自分の遺産は寄付するよりも、イーロン・マスクに渡す」といった趣旨の発言をしたそうだが、その気持ちも納得である。

 

さて、これが実現するとなると、どういった使い方を自分はしたいだろうか。今は英語やオランダ語の勉強で単語やフレーズの記憶作業中なので、たとえばそういった情報が一発で頭の中にインストールしたいな、なんて思う。他には、楽器を演奏できるソフトウェアをインストールしてみたり、見たまんまの景色を保存・シェアできる機能も欲しい。そうすれば旅行で新しく触れた景色を家族や近しい友人とすぐにシェアできるからめちゃくちゃ便利になる。

 

こんなことを考えていくと、おそらくほとんどのスキルや知識を身に着ける努力が必要なくなるのだろう。身に着けるというよりも集める・コレクトするという感覚に近いんじゃないだろうか。遊戯王ポケモンのレアカードを集めるみたいな風に。そうなると勉強すること自体も心から楽しめる作業ではなくなっちゃうんだろうな。なんてことも考えると、努力して身につけたいことを身につける過程や結果を楽しめる時代は今しかないので、今のうちにいろいろ勉強してスキルを磨くことを楽しもう。そんなわけで、明日からもがんばろ。

 

覚えておきたい事柄
・Parkinson disease
・neural lace

 

覚えておきたい英単語
・pronouncement: 表明
・symbiosis: 共生
・intelligible speech: 分かりやすいスピーチ
・electrodes: (発音)
・bandwidth: (発音)
・sewing: (発音)
・plausible: もっともらしい

 

使っていきたい英語表現
・stretch the bounds of credibility
・unveil
・imply
・long-standing aspiration
・albeit
・unsurprisingly
・hurdles abound
・at random
・Conversely
・be clearly aiming for a bigger goal
・The firm has also designed something
・thus
・enabling the species to survive
・a habit of doing something
・fear
・the biggest obstruction to this happening