シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

科学的な外国語学習方法

英語ができるようになりたい!でもどんな勉強をしたらいいのか分からない。

ネットや書店で効果的な勉強方法を探してはみるものの、おススメされている学習方法が多すぎて、どれがいいか迷う。加えて、書かれている本や記事って、体験の紹介が多くて、自分に向いているのかどうかが不安。そんな人におすすめなのが、こちらの本。

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

 

第二言語習得とは、学習者が母語の次に言語を学ぶ過程を科学的に解明する学問で、心理学、言語学、教育学などの学際領域。そんな第二言語習得のエキスパートに書かれた本には、第二言語を学ぶプロセスや、なぜ日本人が英語が苦手なのかなど、興味のあるトピックが取り上げられており、新書にも関わらず非常に読みごたえがあった。実際、引用文献も数多く使われており、引用文献の紹介ページが全体の3分の1を占めていたほどだ。

そんな読み応えのある本から今回は「どういった勉強方法が効果的なの?」という疑問に答えられるように、以下にポイントをまとめてみた。

国語学習に必要な勉強・作業は大きく分けると以下の3つである。
・言語間の距離を埋める勉強
・インプットでデータベースを構築する
・アウトプットを繰り返し行う

具体的にみていこう。


言語間の距離を埋める勉強
第二言語母語には距離が存在する。距離とは、ひとつは言語間のルールの違いである。文法はもちろん、発音の種類、リズムなどである。

加えて、文化的な違いもこの距離に当てはまる。コミュニケーションの仕方や、その状況で相応しい語句を選んでいるかなど、社会的・文化的背景から言語に影響するものである。

これらの距離が大きければ大きいほど習得が難しい。たとえば日本語と英語は距離が大きい言語である一方、スペインと英語には距離が少ないと言われている。したがって多くの日本人は学校で学んだにも関わらず、英語を話せないが、多くのスペイン人は学校で学んだだけで、ある程度英語が話せるのである。

言語間の距離が大きいほど習得が難しくなるのは、外国語は母語を基礎に学ぶという特性があるからだ。したがって、言語間の違いがあることを知ることがまず重要で、その違いを強制的に正す必要があるのだ。
でなければ、いつまでたっても習得できない。たとえば日本に長く住んでいる外国人タレントンの日本語が上達しないのは、この点を理解せずに放置しているからだ。


インプットでデータベースを構築する
言語間の距離の違いを認識できたら、次にやることはインプットである。ここで大事なのは、インプットしたものを理解しようとすること。理解したインプットでないと脳内のデータベースに蓄積されないからだ。脳内に第二言語のデータベースが構築されていけば、理解できることが増える。たとえば同じことをインプットした場合は、もちろんすぐに意味が理解できるし、知らない言葉に関しても、意味を推測することが可能になる。逆に言うと、集中せずにインプット、つまり聞き流しなどはあまり意味がない。データベースが構築されないので、文字通り右から左に聞き流れていくだけなのである。
このプロセスは、幼児の言語習得プロセスと重なる。幼児は生まれた直後から大量のインプットをしているため、彼らの脳内にデータベースが構築されていき、最終的に母語を扱えるようになるのだ。


アウトプットを繰り返し行う
もうひとつは、アウトプットを繰り返し行うことである。脳内データベースが構築されたとしても、それだけではアウトプットできない。データベースからアウトプットに変換するプロセスは別にあるからだ。理論だけでスポーツができないように、脳内データベースだけで英語は使えないのである。それを使いこなすための処理に慣れる必要がある。そのためには、実際に数多くのアウトプットをしなければならない。

アウトプットを繰り返す利点はもう一つある。インプットの質が高くなる点だ。正確には、アウトプットの準備をすることで、インプットしたものの理解度が深まるのが利点。アウトプットするためにはインプットしたものの情報を整理する必要があり、それが理解度を飛躍的に向上させる。

 

科学的根拠の利点

以上が外国語学習に必要な勉強・作業を紹介した。最後にもう一点だけこの本を読んで良かったことを説明する。タイトルにもある通りこの本は、科学的な根拠を基に効果的な勉強方法が書かれているので、体験談が書かれている本よりも信憑性が増す。外国語学習には信憑性が大事で、なぜならば外国語学習は、上達がなかなか感じられないから。上達がなかなか感じられないので、自分のやっていることに疑心暗鬼になり、続けるのが億劫になる。だから、このように信頼に置けるデータに基づいた勉強方法の紹介は非常にはありがたい。まだまだ解明できてない点も多いという第二言語習得の分野。今後の展開にも注目していきたい。