シマウマ de 考察

海外駐在5年目突入のリーマンが書くブログ。最近はThe Economistの記事を中心に書いてます。

地球規模の問題に対する建築・コミュニティデザインのアプローチを考えてみる アレハンドロ・アラヴェナのプロジェクト その2

前回の投稿から引き続き、アラヴェナ氏の話をしたいと思います。

チリの建築家、アレハンドロ・アラヴェナ氏はTED Talksで地球規模の問題に対する3つの取り組みについて話していました。

1. Cities(都市化)
2. CO2(サステナビリティ
3. Tsunami(自然災害)

今回はその内の CO2(サステナビリティ)問題を解決するための取り組みについて深掘りしていきます。

ちなみに前回の投稿はこちら↓

地球規模の問題に対する建築・コミュニティデザインのアプローチから考えてみる。アレハンドロ・アラヴェナのプロジェクト その1 - シマウマ de 考察

 

知的創造が生み出せるオフィス

2012年に、チリで行われたAngelini Innovation Centerのコンペにアラヴェナ氏は参加しました。課題は「知的創造が生み出せる(クリエイティブな)オフィスを建てる」こと。

彼のチームで考え出した結論は、従来のオフィスでは知的創造の観点から適切でないということでした。フロア一つ一つがが重なり合い、中心部分にコアな要素 - エレベーター、階段、パイプやワイヤといった類のもの - を配置したよく目にするオフィス。フロア毎に区切られているので、知的創造には欠かせないコミュニケーションが欠如してしまう可能性が高い。実際に、中で働いている人は別のフロアが何をしているかすら知らないことも多いとか。表面はガラスに覆われているため、直射日光が当たる屋内では温室効果が起きやすい状況です。

 

逆転の発想

そこでアラヴェナ氏たちは、従来のオフィスのデザインに”逆転の発想”を取り込んだのでした。

コアな要素を配置していた中心部分を空洞化するとともに、フロアの一つ一つには開放的なアトリウムを取り入れるオフィスデザインを提案したのです。そこには複雑なプログラムも最新のテクノロジーも必要としない、いわゆる原始的なアイデアを取り入れたデザインでした。

この原始的なデザインのオフィスは、知的創造活動において重要な要素である、”人と同士のコミュニケーションの確立”と”適切な温度と新鮮な空気の獲得”の両方を効率的に実現することができました。

さらには、当初のコンペの課題であった「知的創造が生み出せるオフィスを建てること」を解決するだけでなく、CO2の削減の観点でも大いなる効果をもたらしました。(CO2の排気量を1㎡あたり年間120kwから1㎡あたり年間40kwまで抑えることに成功したそうです。)

 

既存のリソースを利用する

では、アラヴェナ氏はこのプロジェクトの成功を通して我々に何を伝えたかったのでしょうか??

私の結論はこうです。

「既に存在しているリソース(ここでは原始的なアイデアと表現している)にデザインの力を掛け合わせることで、現状の問題解決や、理想とする目的を達成することができる」ということを言いたかったのではないでしょうか。

これは逆を言うと、我々が既存のリソースをうまいこと使えてないのではないか?という問いかけでもあるのではないでしょうか。前回のプロジェクトと合わせて考えるとそう思わざる得ないです。

 

アラヴェナ氏は、今回のプロジェクトとCO2の削減、つまり”エネルギー問題も解決する可能性を秘めている”という流れに話を持っていきましたが、ちょっとそれは言い過ぎかなぁと個人的には思います。
なぜならば、エネルギー問題を言及する場合、”生活活動において発生するエネルギー消費を削減する”という選択肢よりも、”工場や輸送手段に用いられるエネルギーの運用効率を高める”ことのほうが遥かに影響力が大きいからです。まあ詳しい話は、また今度。

 

さて、次回はプロジェクトその3であるTsunamiに対する取り組みに続きます。

 

 ↓はコンペに勝利して建設したAngelini Innovation Centerの記事になります。


Innovation Center UC – Anacleto Angelini / Alejandro Aravena | ELEMENTAL | ArchDaily