「問い」を生み出す!スベキュラティブ・デザインとは?
デザインとは問題解決である。
僕は長らくこの考えを持っていました。もう少し詳しく言うと、デザインとは現状をよりよくするための問題解決をする行為であり、それを実現させるために具体的なものや仕組みを作り上げること。だと思ってました。
具体的な例をあげると、情報を受け手に分かりやすいようにデザインするインフォグラフィックスがあります。
統計情報がある。でもその生データを横流しにするだけでは、伝えたいメッセージが受け手に伝わらないことが多い。そこで情報を”デザイン”することによって、生の情報を与える場合に生じていた問題を解決するのです。それがインフォグラフィックスの役割になります。
建築の話に目を向けると、たとえば、チリの建築家であるアレハンドロ・アラヴェナはデザインの持つ力を利用して、限られたリソースの中で都市の抱える問題を幾度となく解決しています。
しかしながら、必ずしもデザイン=問題解決だけではない。という考えがあることを最近知りました。問題解決ではないデザインとは何か?
「スペキュラティブ・デザイン」です。
今の世界に違った視点を提示する
スペキュラティブ・デザインは、問題解決型のように「未来はこうあるべきだ」と提唱するのではなく、「未来ってこうもありえるんじゃない」という憶測を提示し、問いを想像することができるのである。
これからの社会はどうなっていくのかを考え、未来のシナリオをデザインして、いまの世界に違った視点を提示することができるのです。
詳しくは下記WIREDの記事をご覧ください。
この「未来をスペキュライトする」考え方ですが、どこかで聞いたことあるな〜と思って考えてみたら、デザイナーである原研哉氏の考え方に近いものがあることに気づきました。
「機前のデザイナー」原研哉氏の考え方
彼は自身のことを「機前のデザイナー」と表現しています。
「機前」とは、コトが成就する前の段階のことを言う意味だそうですが、原氏はデザインの役割とはこのような「機前」の構想を次のように説明しています。
「機前」の構想とは、多くの人と共有できるようなビジョンとして描き出すことである。そしてそのビジョンと構想を多角的に発信し、それを受け止めてくれる人とつながっていくことで、機前で終わらせるのではなく実際のサービスとして確立することができるのだ。
やはりスペキュラティブ・デザインと考え方が似ています。そしてこの考え方こそが、付加価値がなかなか生み出せなくなってしまったこの国において、必要なものであると強く感じました。
まとめ
考えを整理するためにまとめます。
問題解決型デザインではないデザインがスペキュラティブ・デザイン。今の世界に違った視点、あるいは未来の視点を提示することが役割である。この考え方は、日本のデザイナーである原 研哉の考えている「機前のデザイン」と根本的な部分は同じ。そしてその考え方は、日本で重要となるであろう。